男女の違いを知り、その特性に応じて教育すれば、男女両方ともその良さをいっそう伸ばせます。
そこで、男女の違いについて拙著『男女別学で子どもは伸びる!』(学研パブリッシング)に記載したことを中心にご紹介します。
男女は記憶の仕方が違う
こういう男女の脳の違いは、記憶の仕方にも違いが出てきます。
私たちは、ものを考えたり覚えたりするとき、短期記憶の2つのシステムを使っています。
一つは、言葉を音の連続として覚えるシステム(音韻メモリー)。もう一つは、視覚的に画像で覚えるシステム(視空間メモリー)です。
脳科学者の篠原菊紀氏は、こう説明されます。
「音韻メモリーは、時系列で頭に収めていくので、歴史の流れを記憶するのに有効。一方、瞬間を切り取って画像で記憶する視空間メモリーは、ビジュアルな地理に適している。言語能力が高い女の子は音韻メモリーに頼りがち、男の子は図解してそれを頭に入れる方がラク。この差が科目の得意、不得意につながると考えられる」『日経kids+』2007年5月号:日経ホーム)
個人差はありますが、男女ともそれぞれ、自分の得意とする記憶のシステムを使って記憶します。
授業の時、教師は、黒板に板書しながら説明をするものです。
このとき、男子には話し言葉だけでなく、できるだけ図に表わして表現してあげた方が、より分かりやすく記憶に残りやすいでしょう。
男女は成長のスピードが違う
男子と女子の身体的、生物学的な相違は、ぞれぞれの人格的成長、感情の発達、知的発達に作用します。
成熟過程が男女で違っていることは、詳細に証明されています。
一般に、女子は、生物学的・精神的に男子より早く成熟します。
このことは、男女それぞれに、母の胎内にいる時点から脳の相違によって既に決定されたものです。
男子と女子の成熟度におけるこのスピードの違いは、一方で、双方の学習習得効率に明白な相違を生じさせます。
男子の認識力の発達は、ある年齢期、女子より遅くなります。
一方、女子は知能面で、7才から16才までより効果をあげます。
とりわけ12~14才、つまり思春期である年頃に顕著です。
特に、前述したように女子は言語の習得力において優れているので、話し始めるようになると直ぐに、ことばを上手くつなぎ合わせ、長く複雑な文を組み立てられます。
読み書きの面で、女子は発育のペースで優位に立っているのです。
男子の発育ペースを示す曲線は、非常にゆっくり推移します。
学校教育の一般の学習システムはこの状況に即していません。
そのため、発達段階の比較的遅い男子は女子より目だって遅れた状態になり、劣等感をもち、元気をなくし、学力の低下をまねくことにもなります。
彼らが女子のクラスメートと同じ授業で同じように学習していくためには、より多くの時間と回数をかけて繰り返し学ばなければならないことになります。
男女は行動が違う
行動面で男女間にはたくさんの相違があります。
同年齢では男子は衝動的で落ち着きがありません。
秩序正しさに欠け、あまり集中せず、自分の感情を表わすことを大変難しいと感じます。
また、多くの男子は攻撃的で、体力と俊敏さでは女子にまさります。
休憩時間の校庭で、このことは一目瞭然です。
汗をダラダラ流しながら服が汚れるのもおかまいなしに、校庭で激しく動き回っているのは男子が圧倒的に多いでしょう。
運動をするにしても休み時間は男子ほど激しく動く女子は少数です。
どちらかと言えば、多くの女子はおしゃべりをしたり、本を読んだり、静かに過ごすことを好みます。
授業は始まると、たいての女子は、クラスで行儀良く振る舞い、勉強することができます。
小学校に入学したてのクラスでも、女子はすばやく自分の席に着き、自分達がすべきことを指示されるのを行儀良く待つ子が多いものです。
一方、男子は教室内をうろうろとしたり、教室を探検しながら机から机に動き回わったりすることが多々あります。