劇創りは、どの学校でもできるわけではないかもしれませんが、この学習は子どもたちにとって楽しく、様々な能力を高めることのできる総合的な学習です。
私は小学校教師のとき、これを毎年やってきました。
教師のとき連載執筆していた「長崎新聞」のコラムをご紹介します。
「あじさい劇場」(長崎新聞に書いた記事より)
あじさい劇場
長崎市の花にちなんで「あじさい劇場」という児童文化祭を六月に本校で催している。
合奏をする五年生以外は、クラスごとに全員が出演する創作劇を演じる。六年生は、下級生の劇の進行・照明・道具・音響などの係をしながら英語劇に取り組む。
脚本執筆、練習、道具作り、リハ-サル、上演と、一カ月間以上かける力とエネルギ-を「大変だ」とぼやきたくなる時もある。
「毎年するはやめようか」という話が教員間に出たこともあった。
どうにか続けてこられたのは、子供たちが成長する姿と保護者の衣裳・小道具作りなどの熱い支援のお陰であろう。
家庭での裏話を聞くも励みになる。
次は、担任をしている小学一年生の保護者三人の声である。
「日に日に劇にのめり込んでいくのが分かりました。読書日記はほとんど劇の脚本、そのうち暗記してしました。歌をうたいながらすべての役を一人で練習し、テレビよりも夢中でした」
「トイレに台本を持ち込み、しばらく出てこないと思っていると、ブツブツ声や歌が聞こえてきました。それ以来、トイレで読むのが習慣になりました」
「自分の役割がとても大事で、失敗したらみんながダメになると言っていました」
一つの劇を創る中で、自分の存在意義、友達との連帯を感じ取っている子も少なくはない。嬉しい限りだ。
近年、いじめ、学級崩壊、校内暴力、殺人など、暗いニュ-スが教育界には絶えない。「生きる喜び」や「生きる力」を言葉で説くのは易しいが、実感させ体得させるのは、いかに難しいことか。
劇作りに「苦労」はあるが、あじさいを打つ「雨風」によって花が成長するように子どもたちの成長には必要なことだ。
家庭と学校が協力しながら、子供たちが輝く舞台をこれからもつくっていきたい。
「長崎新聞」1998年7月24日より
劇は、子どもの能力をどのように伸ばしたか
幸い、この行事は私が学校をやめた後も続いています。
なぜ、続けることができているのでしょうか。
それは、この劇創りは大変だけれども、子どもたちにとって楽しい、彼らの能力をより伸ばす学習だからだと思います。
劇を創ることで、子どもたちは確かに成長していきました。
人前で話すことが苦手な子も、恥ずかしがらずに話ができるようになりました。
表情の乏しかった子も、生き生きと瞳を輝かせるようになりました。
友だちとコミュニケーションがうまく取れなかった子も、友だちと仲良くなれました。
自分のことで頭がいっぱいだったような子が、クラスみんなのことを考えて行動するようになれました。
何よりも子どもたちが一人ひとり劇作りに一所懸命で、楽しんでいました。
私自身も小学生と劇を創るのは、とても楽しかったです。
彼らの成長を見たり、感じたりすることは教師としての喜びでした。
私も脚本を書きながら、演出をしながら、一所懸命でした。
一年生の子どもたちといっしょに、金太郎を乗せたクマや恐いゴリラやウルトラマンにやっつけられる怪獣の役で出演しながら、私自身も楽しみました。
そうして、子どもたちとともに、私もまた教師として成長させてもらえたのではないかと感謝しています。
皆様も、もし子どもたちが劇に取り組む機会があれば、あるいはその機会を作ることができれば、ぜひごいっしょに取り組んでみてください。
親御さんだったら、台本の読み合わせや役の練習に付き合ってあげたり、ごいっしょに小道具や衣装を考えてあげたりできるのではないでしょうか。
きっと楽しい時間を過ごせるし、親子の絆もいっそう深まるでしょう。
そして、成長していくお子さんの姿を強く感じることができると思います。
★今日のプラスアップ1★
劇づくりを楽しむ。
総合芸術である劇は総合学習です。(^.^)