学力を伸ばすヒント

「教え惜しみ」が自ら考え、追究する力を養う

教科書に書いてあることをなぞるような授業では、子どもは、自ら考え、問題を追究する力はつきません。

なぜかというと、面白くないからです。

それに黙っていても、先生が教えてくれる(答えを与えてくれる)ので、自分の頭や体を動かす必要がないからです。

だから、そういう授業を受けている子どもは、トローンしています。

しかし、今からご紹介する有田和正先生(東北福祉大学教授)は、筑波大学附属小学校の教諭だったときに、児童・生徒を「追究の鬼」に育てることを信条とし、

多くの「自ら考え、行動する」子どもたちを輩出してきました。

とことん研究し尽くされた授業の方法とだれもが食いつくネタの開発を通して「授業の名人」として教育界にその名をとどろかせるようになった人です。

目次

わざと間違える、教えない

有田先生は、子どもが自ら追求するために、

1.わざと間違った事実を提示する。

2.もっとも肝心な部分をあえて教えない。

という2つの戦略を立てました。

1つの例をあげます。

小学1年生の授業で、黒板に、「こんにちは」と書くべきところを

「こんにちわ」とわざと間違えるんです。

すると、子どもたちが「先生、それ間違いだよ」と指摘します。

それでも、

「いや、『わ』が正しいんだよ。

君たちも口でいうときは『こんにちわ』って言うじゃないか」

と、とぼけるんです。

すると子どもたちは、「違う、違う」といっせいに反発します。

そのうち誰かが「先生、辞書を引いて確かめてみたら・・・」と言います。

有田先生は、辞書を引くまねをして、

「辞書には出てないみたいだね」と、とぼけつづけ、

そのまま授業は時間切れとなります。

その後、子どもたちは、居ても立ってもいられなくなります。

いっせいに辞書のあるところに走り、目の色を変えて調べはじめるのです。

そして、「こんにちは」を見つけると、「先生、ちゃんと出てるじゃないか」と有田先生に詰め寄ります。

有田先生は、ついに降参して、あやまりながら、子どもをほめるのです。

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「追及の鬼」を育てる

おわかりでしょうか。有田先生のやり方の真意。

普通に「『こんちにわ』は、間違いです。『こんにちは』が正しい。」

と教えれば、数秒で済みます

でも、それでは印象に残らないし、子どもたちの学習する意欲も態度も育たない。

有田先生は、ただ知識を教えこむのではなく、既存の事実に問いをもち、その問いを自分で調べて解決するために、追究していく子どもを育てようとしていのです。

その方が子どもには、勉強が俄然面白くなるし、力がつきます。

そういう自主性や意欲のある子は、将来、ぐんぐん伸びていくのです。

★今日のプラスアップ1★

自ら追究していく子を育てよう。

わざと間違える、肝心なことを教えない。  (^.^)

【出典】有田 和正著『教え上手 』

有田先生は教師向けにこれまで200冊近い著書を出してこられましたが、はじめて一般向けに書かれた本です。