「読書は一番の勉強」
私が勤務していた学校では、子どもたちに、「読書は一番の勉強」と言っています。
読書が進んでできる子どもは、いま多少テストの点がよくなくても、だいじょうぶです。
読書が習慣化していると、自然と国語の力がつくからです。
国語はすべての教科の基礎となります。
私は中学校で社会科を教えたことがありますが、国語の成績のよい子は社会の成績が悪くなることはまずありません。
社会科の教科書はよくできているので、基本的に自分で教科書の文章がすらすら読めて理解できれば、テストには対応できるのです。
また、理科でも算数でも、教科書やテストは文章で説明されているので、まず文章が読めなければなりません。
はじめて取り組む算数の応用問題を一度か二度読んで、「意味がわかりません」と言う子がよくいますが、たいていは文章の読解力の弱い子です。
読書は、他の教科にも必要な読解力と語彙力をつけてくれるのです。
さらに、読書をしていると、幅広い知識を身に付けることができます。
社会科でも理科でもすべての教科で言えることです。
教科書や授業で学習したことをきっかけに、自分が興味をもった分野や人物に関する本を探して読めると、幅広く深い知識がどんどん身についていきます。
その知識の蓄積は、目先のテストでは必要ないかもしれませんが、将来きっと役に立つのです。
読書は心に栄養をあたえる
読書は心を耕し育てる行為です。
本を読むことにおいて、子どもも大人も人間として成長していきます。
以前、子ども読書年に開催された国際児童図書評議会世界大会で、美智子皇后様(当時)が「橋をかける――子供時代の読書の思い出」という講演をされました。
美智子皇后様のはじめての講演とあって、テレビでも放映され大好評を博し、同名タイトルで収録された本も出版されています。
その講演の中で、皇后様は、子ども時代に読まれたさまざまな本やその読書体験を回想されながら語られました。
「振り返って、私にとり、子供時代の読書とは何だったのでしょう。何よりもそれは、私に楽しみを与えてくれました。そして、その後に来る、青年期の読書のための基礎を作ってくれました。それはある時には私に根っこを与え、ある時には翼をくれました。この根っこと翼は、私が外に、内に、橋をかけ、自分の世界を少しずつ広げて育っていくときに大きな助けとなりました」
皇后様がおっしゃるように、読書は、子どもたちが悲しみに耐え得るしっかりした「根っこ」を育て、生きる喜びに向う強い「翼」を育てるのです。
読書好きな子に育つ「読書日記」「10分間読書」
私の勤務していた小学校では、家庭でも読書をするように勧めています。
そのため、小学1年生の5月から、「読書日記」という宿題を出しています。
「読書日記」とは、読んだ本のタイトルとページ数を書くだけのカンタンなものです。
読む本、読むページ数、時間は自由です。
ただ、これを毎日、担任に提出します。
担任は、毎日その日の欄にハンコを押して返します。
このやり方なら、男の子でも長続きします。
続けるうちに、子どもは読書が好きになり、読書が習慣となっていきます。
読書日記は、1年間分ファイルに閉じれば、自分の個人読書記録になります。
おかげで、1つのことを続ける力も養われ、見える形で残すことができましたし、なによりも読書好きの子が増えました。
家庭でも、子どもが読書を好きになるように、ぜひ、何か小さな取り組みをしてみてください。
たとえば、いっしょに「10分間読書」をすることはすばらしいと思います。
親にも子にも、よい勉強の機会になるでしょう。
どんどん読書をする。