男女の違い

男女別学のメリット~男女の違い(特性)に応じて(2)

男女の違いを知り、受け入れて、その特性に応じて教育すれば、男女両方ともその良さをいっそう伸ばせます。

そこで、男女の違いについて拙著『男女別学で子どもは伸びる!』(学研パブリッシング)に記載したことを中心にご紹介します。

目次

女子は聴覚がすぐれている

赤ちゃんのころから、女子の聴覚はすぐれていることがさまざまな研究で立証されています。

たとえば、音楽療法を生まれたばかりの未熟児に施したところ、女の子には効果があり、退院の日が音楽療法をした子より数日間早まったが、男の子にはほどんど効果がなかったという複数の研究結果があります。

またアメリカのルイジアナ州立大学では、誘発耳音響放射という方法を使って、赤ちゃんの聴覚を調べました。

「女の子と男の子の新生児350名を調査した結果、女子の聴覚は男子のよりはるかにすぐれていて、とりわけ話し言葉の識別にごく重要な1000から4000ヘルツの範囲の音に敏感であることを発見した」(レナード・サックス著『男子の脳 女子の脳 こんなにちがう見え方、聞こえ方、学び方』草思社)

と、女子の聴覚の優位性が立証されています。

このような男女差は、子どもたちが就学年齢に達したときにもあります。

学校でも、女子は同じ年の男子より聴覚に優れていて、小さな音にでも敏感です。

男子は、教師のささやくような声はよく聞こえず、どうしても注意が散漫になります。

そのため教師が声を張り上げれば、女子には声が大きすぎて、ときに怒鳴り声のように聞こえ、不快感をもつ子もいるでしょう。

また、女子と比べて、わが子(男子)は耳が悪いのではないかとご心配の親もときどきいらっしゃいます。

私が教師のとき、小学一年生の男子のお母さんとの個人懇談で次のように聞かれたことがあります。

「うちの子は、授業中に先生の話を聞いていますか?家ではわたしが普通に話しかけても、姉はちゃんと聞いているのですが、あの子には聞こえてないみたいなんです。あの子、耳が悪いんではないでしょうか」

「いいえ、健康診断の耳の検査で異常はありませんでした。授業でもちゃんと話を聞いていますよ」

そう私は答えたのですが、あのとき、女子の方が男子の聴力がよいことを知っていたら、さらにこう付け加えていたと思います。

「一般に女子の方が耳がいいので、同じように話しかけたら、女子には聞こえても男子には聞こえないことがあるんです。ご家庭で、○○くんに話しかけるときは、ちょっと声を大きくするか、顔をこちらを向けさせてから話すようにしたら、お母さんの話がきちんと伝わると思いますよ

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ADHD(注意欠陥多動性障害)は男子に多い

ADHD(注意欠陥多動性障害・Attention Deficit Hyperactivity Disorder)は、男女比は統計によって異なりますが、1:3~1:6くらいで、男子の方が多くなっています。

ADHDを特徴づけている特徴は、注意力不足、多動性、衝動性の3つです。

しかし、この症状は男子が教室で教師の話が聞こえていないからおこっているという指摘があります。

その説を訴えているのは、アメリカの内科医であり心理学者であるレナード・サックス博士です。

1990年代の半ばから彼の診療室に、小学校二、三年生くらいの男子がADD(注意欠陥障害・Attention-Deficit Disorder)であるという学校からの通知をもって次々やってくるようになりました。

ADDとは、多動性が少ない不注意優勢型のADHDの一種です。

サックス博士は多くの子どもを診断した結果、ADD症状の子と診断される子が男子に多いのは、教室で穏やかに話す先生の声がほとんど聞き取れていないことにも原因があるとの結論に至りました。

「こうした男の子たちの一部に必要なものは、ADDの薬ではなかった。ほんとうに必要なのは、女の子と男の子の生来の学び方のちがいを理解している教師だったのださらに調べてみると、学校関係者のだれひとりとして、聞く能力の性差を認識していないこともわかった」(レナード・サックス著『男子の脳 女子の脳 こんなにちがう見え方、聞こえ方、学び方』)

ADDあるいはADHDと診断された子は、注意散漫で、授業中に立ち歩く、おしゃべりをし続けるなど、教諭や他の生徒にとってやや困った場面を生むことがあります。

しかしADHDは知能の低下を意味しません。むしろ、エジソンやアインシュタインなどの天才は、小学校入学時にADHDだったのではないかという説もあるくらいです。

教室で教師は生徒がADHDをもっていても多動衝動をコントロールしていれば普通の生徒として評価できます。

学習面においては、計算などの単純作業において障害が原因でミスが多くなる傾向はあっても、まわりの人の適切なフォローや本人の意識によってミスを減らすことは可能です。

私が受け持った子の中にも、ADHDと診断された子が何人かいました。その子は席を前にして、目をくばり、言葉かけも多くしました。

落ち着かない男子ばかりの中でも、特に落ち着かなかったのですが、知能はすぐれて、成績は良かった子がほとんどです。

それにまわりの子が男子ばかりなので、ある程度、衝動的な行動にも理解を示してくれたり、気にしなかったりしたのがよかったのかもしれません。

女子の見るものと男子の見るものは違う

一般に女子は人の顔の表情を読み取るのがうまいものです。

まわりの女子は誰が好きだとか、いま傷ついているのか、怒っているのか、その表情やちょっとした仕草で察知します。

その点、男子は、はっきり言葉に出して伝えないと気づかいないくらい鈍感です。

先のレナード・サックスの『男子の脳 女子の脳 こんなにちがう見え方、聞こえ方、学び方』によると、この違いは男女の生物学違い、とりわけ脳を含めた目の構造の違いによるそうです。

女性が人の表情を読み取るのが生まれつきのものなのか、それとも社会的な要因なのか、ケンブリッジ大学の研究グループが生まれたばかりの赤ちゃんを調べました。

102人の赤ちゃんをビデオ録画して、笑いかける若い女性と上からつりさげただけのモービル(おもちゃ)のどちらを見るかを調ました。

その結果、女子は若い女性の顔に、男子はモービルを見ようとし、その差は大きなものでした。

つまり、女子は生まれつき人の顔のほうに興味をもち、男子は生まれつき動くもののほうに興味をもつという結論が得られたです。

この違いの原因は、男女に目の構造の違いにあります。

男女それぞれの目を調べると、男性の網膜には動きを感知する大細胞がおもに分布しており、女性の網膜にはおもに色と質感を感知する小細胞で占められていることがはっきりしています。

そのため、男性の網膜は女性の網膜よりずっと厚くなっています。

この目の構造の性差によって、男子と女子の興味や行動や得意分野の違いは生まれます。
たとえば、男子は車など動くおもちゃが好き。女子はお人形さんが好きであること。

絵を描くとき、男子は動きのある絵(とぶ飛行機やロケット、走る車など)を描こうとします。そして、どちらかといえば、冷たい色(青、灰色、銀、黒)を使いたがります。

女子は、人物の絵(あるいはペットや花や木)で、おもに暖かい色(赤、緑、ベージュ、茶)を好む傾向にあります。

私が小学校の図画工作科の授業で教えていたとき、男子は絵に青や銀色といった色をよく使う傾向がありました。

それに何でも好きなものを描いていいというと、乗り物を描く子が多かったです。

女子校の女の子の絵はそれに比べると、全体的に色調が明るい印象を受けました。

女子校の先生に聞くと、女子に自由に絵を描かせると、お人形さんのような人物が多く、服も色とりどりで、そのまわりを明るい色の花やハートで埋める子が多いのだそうです。

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