親以外にも伝わる話し方を身につけよう
男の子は、「おやつ」「おふろ」「パンツ」など、短い単語でコミュニケーションをとろうとする傾向があります。
これは、家庭内で、親には通じるコミュニケーションでしょうが、幼稚園や学校、一般社会ではまず通じません。
ですから、親以外の人にも伝わるような話し方ができるように訓練することが必要です。
「どうしたの?」で、しばらく待つ
たとえば、教室で体育のあとの着替え中に、小学1年生のある子が私のところまでやってきてこう言ったことがあります。
「ん、んん……」
彼が着替えをしていて、ボタンがなかなかとめられないのは見ればわかります。
先生にボタンをとめてほしいと思っていることもわかります。
そして、この子の家ではこのように「ん、んん……」と訴えれば、誰かが助けてくれたのだ、そういう育てられ方をしてきた子なのだとも察しがつきます。
もしも、あなたが、この子のクラス担任であればどうするでしょうか。
私はこれまで、このように対応してきました。
「○○くん、どうしたの? 言ってごらん」
すると、その子は言います。
「先生、ボタン……」
「○○くん、ボタンができないから先生にしてほしいんだね。それじゃあ、こう言いなさい。『先生、ボタンができないので、してください』って」
そう聞くと、その子は私を見て言います。
「先生、ボタンができないので、してください」
つまり、その子はちゃんとそういうふうに言えるのです。
私はそういうとき「よく言えたね」とほめてあげます(その後、「ボタンは自分でするものだから自分でやりなさい」と言いますが……)。
このケースのように、身近な人だったら、「ん、んん……」でも「ボタン」でも通じます。親切な人なら、その子の思いを察して、なんとかしてあげるでしょう。
しかし、子どもが将来、より広い社会に出て行って、自分の思いや願いをかなえることができるようにするためには、自分のことを知らない相手にもきちんと自分の気持ちが届く言葉づかいをさせなければならないのです。
「○○じゃわからないよ」で、言い直しをさせる
家庭でも、お母さんに言う言葉も単語ではなく、文で言わせたらいいと思います。
子どもが「おやつ」と言うときは、穏やかに「おやつ、じゃわからないよ。おやつをどうしたいの?」と聞けばいいのです。
すると、子どもは頭を働かせて、自分の思いをいろいろな表現で伝えようとするでしょう。
たとえば、
「おやつ」
↓
「おやつを食べたい」
「おやつを食べていい?」
「おやつを食べたいけど、いま食べてもいいの?」
「お母さん、今日のおやつは何を作ってくれるの?」
自分の思いや考えを伝えるために、頭を働かせ、相手に伝わるように表現するようになっていきます。
このように親が日常的な言葉づかいをちょっとだけ意識するだけで、子どもの思考力は伸びていきますし、言語表現も豊かになっていきます。
文になるように伝えさせる。