動くことでやる気がでてくる
何事も始めるときにはいろいろとめんどうで、エネルギーを必要とします。
ロケットが飛び発つときには、飛行中の何倍ものエネルギーを使います。
でも、発射に成功すれば、慣性の法則でラクになります。
私たち人間の行動も同じで、始めるときには大きなエネルギーがいるものです。
ですから、子どもが何かを始めるとき、親がいっしょにしてあげるといいです。
まず、とりあえずやってみる。
やる気は動くことによって湧いてきます。
やる気がでてから動くのではなく、動くことでやる気がでてくるのです。
男の子を読書好きにするには……
ある小学1年生の男の子は、本を読むのが苦手でした。
本よりも漫画やテレビが好きで、「本を読みなさい」と言っても聞きませんでした。
そこでお母さんは、男の子が寝る前に、いっしょに本を読むことにしました。
最初は、男の子が興味をもっていた恐竜の図鑑です。
お母さんは恐竜にはあまり興味がなかったのですが、男の子がとても好きだったのです。
まずは、本をもって本を広げます。
すると、そこに新しい世界があって、その絵や写真や文字を追ううちに、その世界に入っていきました。
そうしていくうちに、男の子は恐竜の図鑑に興味をもち、お母さんがいなくても自分ひとりで図鑑を取り出しては眺めていったのです。
お母さんに話す会話も、ティラノサウルスがどうのこうの……。でも、お母さんも図鑑をいっしょに読んだことがありましたから、その会話の内容をある程度理解できます。
すると、男の子はさらに勉強したことをお母さんに話してくれるようなりました。
この子は1年生の1学期くらいは、恐竜の図鑑ばかり読んでいて、「うちの子、だいじょうぶでしょうか?」と少し心配もされていました。
しかし、2学期になると昆虫にも興味をもち始め、昆虫の図鑑や物語を読むようになりました。3学期には、動物へと……どんどん興味を広げていきます。
そして、お母さんが読みなさいと言わなくても、自分から本を広げて読む子になっていました。
このように、最初は親がいっしょに付き合ってあげるといいのです。
おもしろさがわかると、子どもは自分から意欲的に動き出します。
やりはじめると好きになる
男の子は、好きなことには、どんどんのめりこんでいきますが、何か新しいことを始めるのは、4月または夏休みがチャンスでしょう。
私の教え子に、小学1年生のときに夏休みに家族で昆虫採集に行って、チョウの標本箱を自由研究として提出した子がいました。
そしてそれ以来、チョウが大好きになりました。
私が勤務していた学校では、小学6年生で自分の好きなことを研究して発表する卒業論文を一年がかりで取り組み、発表会を4月に行います。もちろん、その子は、当然、チョウの研究でした。
ふつう、卒論指導のために、担任以外に、一人ひとりにその分野の得意な担当教師がつきます。そうして、休み時間や放課後に相談に行ったり、アドバイスを受けたりできるシステムになっているのです。
でも、彼の場合、チョウに関する知識では担当した理科教師以上だったため、論文の書き方を指導するくらいでよかったそうです。
小学生のときから、大学や高校の先生たちに交ざってチョウの学会に参加するくらい研究に夢中なり、さらには、中学生、高校生のとき全国的な科学の賞をもらい、大学は理学部に進みました。
この男の子がチョウの研究に没頭するようになったきっかけは、夏休みに親子で行った昆虫採集です。
この子も最初は、チョウのとり方さえも知りませんでした。
けれど、親がいっしょに昆虫採集に行くことで、興味をもち始めたのですね。
こんなふうに、親が最初はきっかけをつくり、付き合ってあげることで、子どものやる気にスイッチが入るものなのです。
はじめは親といっしょにする。