効果的なほめ方のヒント

きょうだいとしての子どもの立場を考えてほめる

当然ながら子どもはひとりひとり違う個性をもっていると同時に、性別、それぞれの家庭の中での立場、発達段階が違います。

それらを考慮していないと、ほめたつもりでも子どもの心を傷つけることもあります。

逆に一人ひとりの子どもに合わせてほめることができれば、同じほめ言葉でもより効果的に子どもを伸ばすことにもなります。

ここでは、きょうだいの中での立場によるほめ方の違いを考えていきましょう。

例としてあげたものは絶対的な基準ではありませんので、目の前の子どもをよく見て、その子に応じたほめ方を考えていく際の参考としていただければ幸いです。

目次

子どもの立場を考えてほめる

きょうだいには年令の上下関係があり、それぞれ立場は違います。

弟の前で兄ばかり叱ればひどく兄が傷づくこともあるでしょうし、弟の前で兄ばかりがほめられて弟がねたむこともあるでしょう。

ほめるのも叱るのも愛情ですが、それが偏らないように、きょうだいの立場を考慮した上で、ほめ方も工夫していく必要があるでしょう。

きょうだい(兄弟姉妹)としてほめる

家庭の中で子どもどおしが仲がよいと、家庭が明るく温かなものになります。

きょうだい仲がいいのは理想的ですが、たまにきょうだいげんかがあったとしてもあまりマイナス評価はしない方がいいでしょう。

「あなたたちは、またけんかしてるの」「仲が悪いのね」と叱ると、子どもはきょうだい仲が悪いというイメージが強くのこり、関係が悪化します。

きょうだいげんかがあれば、双方、どこがよくなかったのかわけを聞いてやり、反省させ仲直りをさせます。そうすれば、友だちと接するときの人間関係、コミュニケーション能力の成長の機会となります。

しかし、けんかはない方が望ましいので、親はきょうだいが仲良くしているときを見つけてほめてあげるといいでしょう。

仲良く食べ物をわけあっているとき、遊んでいるとき、いっしょにお手伝いをしているときに、「仲良できたね」「よく協力してできたね」「あなたたちは仲がいいね」などと肯定的に評価してあげます。

親は子どもが複数いると、どうしても比較してしまうのですが、どちらか一方をほめるときに、比較してほめるのは(叱るのも)、あまりよくありません。

「お兄ちゃんはダメだったけど、あなたはよくできるわね」というようなほめ言葉には、ほめられた方は気まずくなり、ほめられない方は自分を否定されてイヤな気持ちになります。

比較されると、優越感やひがみの感情も生まれ、きょうだい関係を微妙にゆがめることにもつながるのです。

あるきょうだいをほめるときには、他のきょうだいをおとしめることなく、それぞれのよいところを1つずつほめるとよいでしょう。

「お兄ちゃんは算数が得意で、あなたは国語が得意なのかしらね。おなじきょうだいでも人間って得意なことが違うものなのね」

このように双方のよいところを認めてあげるとよいでしょう。

ポイント 比較せずにほめる

 

上の子をほめる

上の子が、弟や妹の兄や姉であるという自覚をもっていることは大切です。

上の子が自分は年長者だから、弟や妹を守ってあげよう、いろいろと教えてあげようという自覚もって世話と焼いてくれれば、親の子育てはいっそう楽になります。

上の子は下の子の面倒を見ることにでより成長します。

でも、うまくいかなったときに、「どうしてちゃんと面倒見てあげなかったの?」「お兄ちゃんのくせにダメじゃないの」と、下の子の前で叱るのは、上の子のプライドをひどく傷つけます。

劣等感を植えつけられて、年長者としても立場がなくなります。

私の教え子に、年子の兄弟がいました。兄は勉強も運動もよくできる子でしたが、弟はその兄よりもさらによくできる能力の高い子でした。

自分より優秀な弟がいると兄としては何かとやりにくいし、劣等感をもちやすいものです。、ところが、その兄弟はとても仲がよかったです。

それは、たぶんご両親が学校の成績では弟に劣る兄を上の子として尊重していたからではないかと思います。

「あなたの成績がいいのは、お兄ちゃんのおかげでもあるのよ。お兄ちゃんは初めていろいろなことをして失敗するけれど、あなたはお兄ちゃんのその失敗も見ているから、うまくいくことが多いのよ」。弟はそう言われてきたそうです。

上の子が上の子として自覚をもてるようになるには、親が何かにつけて上の子をたてた方がいいでしょう。

「さすがお兄(姉)ちゃんだね」「弟や妹の面倒をよくみてあげられたね」「お兄(姉)ちゃんに任せてだいじょうぶだね」などとほめることで、その上の子の自覚は促されていきます。

ポイント 上の子をたてる

 

下の子をほめる

初めての子(上の子)が生まれたときは、親も子育てが初めてなので、うれしい反面いろいろな気苦労があり、多くのエネルギーや時間をつかいます。

下の子の場合には、上の子の子育て経験があるので、親にも馴れが生じます。

上の子のときは写真やビデオをたくさん撮ったのに、下の子のときはそれほどでもない。上の子のときは、服もベビーカーも何もかも新しかったのに、下の子のときは上の子のお下がりを使うこともあるでしょう。

下の子はそういう物質的なことを不満に思うことがあるでしょう。

でも、それによって親の愛情が平等でないと感じさせてはいけません。

「あなたも大切な子なのよ」ということを、言葉や行動で示してあげるとよいでしょう。

上の子にしてあげてよかったと思うことは、下の子にもしてあげるとよいでしょう。

逆に、上の子は下の子が生まれると、親の愛情が下の子ばかりに向いているのを感じて寂しい思いをすることが多いものです。

親が自分には厳しいのに、下の子には甘いのを感じると反発心が起こります。そのため、わざといたずらや乱暴な言葉を投げつけて親の注意を引こうとすることがあります。

こういうとき頭ごなしに叱りつけても、上の子の思いは満たされません。

それよりも、上の子には、「覚えていないかもしれないけど、小さい頃、あなたもこんなふうにしてもらったのよ。あのときは、初めてだったからお母さんもドキドキワクワクしてたよ」と教えてあげると、いくらか親の愛情に気づくでしょう。

親は下の子が生まれたら、きょうだい(兄弟姉妹)への愛情のバランスを考え、できるだけ両方を認め、ほめるようにすることを心がけた方がよいでしょう。

「お兄ちゃん(お姉ちゃん)の言うことをよく聞いているね」「お兄ちゃん(お姉ちゃん)のいいところを真似したね」などは、上の子、下の子を一度で両方ほめることのできる言葉です。

ポイント 愛情を公平に分け与える

 

一人っ子をほめる

子どもが一人ですと、親の愛情はおのずとその子に集中します。

子どもは家庭の中で接する人が親だけに限られるので、親への依存心が強くなる傾向があります。

親がわが子を愛するのは大切なことです。

でも、子どもを溺愛して甘やかし過ぎないようにしなければなりません。

子育ての目的は、子どもが社会の中で自立していけるようにすることです。

いつまでも親に依存して自分では何もできない子ではなく、たとえ困難があっても自分で道を切り開いていけようなるたくましい子に育つことが将来の幸せにつながります。

たとえば、着替えやかたづけなど、子どもが自分できることは、あまり手を貸させないで、時間がかかってもなるべく自分でやらせた方がいいでしょう。
そして、「ひとりでできたね」「自分でやれたね」とほめてあげましょう。

また、一人っ子はきょうだいで遊んだり、助け合ったり、物を分け合ったり、助け合ったり、ケンカをしたり、仲直りしたりする機会がありません。

ですから集団の中でも、子どもどおしで遊んだり、コミュニケーションを取ったりすることができるように親が気を配るべきです。

たとえば、親戚の子や近所の友だちとも積極的に関わりをもたせるようにすることで、人間関係の幅を広げることができるでしょう。

「なかよくできたね」「いっしょに遊べたね」と他の子どもと関わりをもてたことを親が積極的にほめるとよいと思います。

他にも、親の考え次第で、次のような機会をつくり、子どもに貴重な経験を味わわせることができるでしょう。

たとえば、もちろん先方の保護者と話し合った上でのことですが、わが子と仲の良いクラスメートや親戚の子を夕食にさそってあげること。

その子を休日の前にあずかり、一泊わが家に泊めてあげること。

さらには、よその子をあずかるだけでなく、逆にわが子をよその家にあずかってもらうこともできるでしょう。

親から離れて、よその家に泊まるだけでも、自立への大きな一歩です。
そういう機会があれば、「ひとりでよその家に泊まってもだいじょうだったね」「大人になったね」とほめてあげることができます。

子どもは、子どもによって磨かれていきます。

子どもどうし、ふれあい、磨きあうなかで、社会性を身につけ、たくましく生きる力をつけていくのです。

ポイント 自立心を育てる