徳を育てるヒント

「寛大さ」思いやりの花を咲かせる

「寛大さ」思いやりの花が咲かせる

児童文学の名作に、斎藤隆介著『花さき山』があります。
絵本にもなっている短い物語で、是非一度は子どもたちに読み聞かせをしてあげるとよい作品です。

次のようなストーリーです。

山の奥に迷い込んだ少女あやは、見たこともない美しい一面の花々が咲く場所で、一人の山ンばに出会います。

山ンばは、不思議なことにあやの名前も、なぜこの場所へ迷い込んだかも知っています。

そして、一面の花々が咲くわけを次のように語って聞かせるのです。
「ここの花は、ふもとの村の人間がやさしいことを一つすると一つ咲く。あや、お前の足元に咲いている赤い花、それはお前がきんの咲かせた花だ」

確かに昨日、妹のそよが祭りの赤いべべ(服)を買ってくれと、だだをこねて母親を困らせたとき、そよは言ったのでした。

「おっ母あ、おらはいらねえから、そよサ買ってやれ」

そのとき、この赤い花が咲いたのだと山ンばは言います。

「家が貧乏で、二人に祭り着を買ってもらえねえことを知っていたから、自分はしんぼうした。おっ母あは、どんなに助かったか!そよは、どんなによろこんだか!お前は切なかったべ。だども、この赤い花が咲いた。この赤い花は、どんな祭り着の模様よりもきれいだべ。ここの花はみんなこうして咲く」

この話をあやは、村に帰ってから、父母らにするのですが、誰も信じてくれません。

その後、山ンばには二度と会うことはなく、花咲き山も見つかりませんでした。

けれども、あやはそれ以来、ことあるごとに、「あっ!いま花咲き山で、おらの花が咲いているな」と思うようになったのでした。

私は思うのです。花咲き山は、目には見えないけれど、きっとどこかにあるのだと。

それは、人の心の中にあるのかもしれません。

花咲き山では、やさしいことをすれば花が咲くと言います。
心の中に美しい花が咲き、心を美しくするのです。

小さなことでも、思いやりをこめれば心に花が咲きます。
小さくてもきれいな花がいっぱいになり、心の庭を広く美しくするのです。

この世で本当に大切なものは、目には見えません。
でも、心で感じることはできるでしょう。

これまであなたは子どもの心の中に、美しい花が咲いたように感じたことがありませんか。あれば、そのときが子どもをほめるチャンスです。

「あっ、今あなたの花が咲いたよ」
そう口に出さなくても、子どもの顔を見てにっこりほほえんであげたいものです。

思いやりの心を育てよう。