豊かな心を育てるヒント

「朝の十分間読書」の効用

「朝の十分間読書」というすばらしい教育があります。

林公(ひろし)という高校の先生が提唱されて以来、今や「朝の十分間読書」は、全国26700校以上の小・中・高校に広がってきています。(2019年1月時点)

「朝の十分間読書」のやり方はカンタンです。
自分の好きな本を開いて、授業前の十分間、毎日全校生徒が声を出さずに読書をするだけです。

しかし、その十分間は、騒がしかった校内が水を打ったようにシーンと静まり、時々ページをめくる音が聞こえるだけの知的で豊かな時間となります。

「朝の十分間読書」を実践している教室では、本好きな子が急激に増えました。
子どもたちに、読む力と同時に書く力もついてきました。

さらには、その教育効果は子どもたちの生活面にも及びました。

続けているうちに、次第に遅刻が減り、イジメや校内暴力がなくなってきたのです。林先生は「心の教育は朝の読書から始まる」とまで言われています。

そういう教育効果が全国至るところで見られるようになり、林先生は、その功績により、第四十四回菊池寛賞を受賞されています。

なぜ、「朝の十分間読書」には効果があるのでしょうか。

第一に、みんなで一斉に取り組むので、読書が苦手な子どもでも継続しやすい。
第二に、朝の十分間という短い時間なので、どの子も集中しやすい。
第三に、時間が短いので、自分から本の続きをもっと読みたくなる。

「朝の十分間読書」では、外見上はみな一斉に同じことをしていますが、読んでいる本は一人ひとり違います。

ひとつのルールを全員が守りながら、一人ひとりの個性を尊重した知的営みなのです。

同様の営みは、家庭でもできるのではないでしょうか。

十分間という時間制限はありませんが、私の勤務していた小学校では、全児童のほぼ100パーセントの子どもが家庭で毎日読書をしています。

小学一年生の五月から、「読書日記」という宿題を出し続けているからです。
「読書日記」とは、読んだ本のタイトルとページ数を書くだけのカンタンなものです。

これを毎日、担任に提出します。
続けるうちに、いつの間にか読書が好きになり、読書が習慣となっていくのです。

さて、読書が子どもの宿題であってもなくても、あなたのご家庭では、思い切って「家庭での朝の十分間読書」ができないでしょうか。

家庭でも、朝、家族が同じ部屋に集まり、テレビも音楽も消して、思い思いの本を開く知的で豊かな十分間を過すことができないでしょうか。

もちろん、家族全員で取り組むのですから、家族で話し合い、みんなの同意が必要です。
きっと豊かで充実した朝を過ごせるようになるでしょう。