ふつう、学校では子どもに国語の教科書の音読を何度も繰り返しやらせます。
声に出して読むと、集中できるし、頭に入りやすく、記憶に残りやすいことを経験的に知っているからです。
脳の研究の第一人者である東北大学の川島隆太教授は、近年、「大人でも文章を音読したり、計算問題をしたりすると脳を活性化する」という研究成果を発表し、音読による学習効果がさらに見直されています。
また、明治大学の齋藤孝教授の主張で、暗誦の価値も見直されています。
「暗誦文化は、型の文化である。型の文化は強力な教育力を持っている。一度身につけてしまえば、生涯を支える力となる。日本語の感性を養うという観点から見れば、暗誦に優るものはない」(齋藤孝著『声に出して読みたい日本語』)
それは、「日本語の宝石を身体に埋めておく」ことだそうです。
また、この学習法は、また文章上達の道にも通じます。
作家の丸谷才一氏は『文章読本』の第二章「名文を読め」で言います。
「作文の極意はただ名文に接し名文に親しむこと、これに尽きる。事実、古来の名文家はみなさうすることによって文章に秀でたので、この場合、例外はまったくなかったとわたしは信じている」丸谷才一著『文章読本』
森鴎外も夏目漱石も鴨長明も紫式部も、皆、名文を繰り返し音読し暗誦して、自分の文体を築いたのです。
江戸時代に武士の子弟の学習法や寺子屋の教育でも、この学習法をとっていました。
そして、少年たちは漢字だらけのかなりの長文でも暗記していたのです。
これを現代の子どもたちができないはずはありません。
私は以前受け持った小学二年生の子どもたちにも、この学習をさせました。
子どもたちは、「平家物語」や「方丈記」の冒頭文をほとんどの子が暗誦してしまいました。
宮沢賢治の「雨ニモマケズ」も全文暗誦できたので、おじいちゃんがたいそう喜ばれ、春休みに花巻市の宮沢賢治記念館に連れていってもらった子がいました。
そこで、たまたまやっていた地元のラジオ局の番組に飛び入り出演し、「雨ニモマケズ」の暗誦を披露できたことを嬉しそうに報告してくれました。
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ・・・
身体に埋め込んだ言葉の宝石が、将来子どもたちの人生を支えるものとなるでしょう。
★昔からの名文は音読し暗誦させよう。